特別受益

被相続人から贈与や遺贈を受けた相続人と受けてない相続人の不公平を解消

特別受益

相続のときに相続人が複数人いる場合、その相続人の一部の人が、被相続人(死亡した人)から生前に特別な財産の提供を受けていることがあります。この「生前に受けていた特別な財産」のことを特別受益といいます。

相続のときに特別受益に該当するとされているものは、以下のようになります。

  • 遺言書によって各相続人が得ることができた相続財産
    ※遺言書で相続人以外の人に与えている財産は含まない
  • 婚姻や養子縁組のために特別に受けた財産
    ※婚姻のときの持参金や支度金、嫁入り道具、新居など
  • 生計の資本として特別に受けた財産
    ※大学の学費や海外へ留学したときの費用、独立開業したときに援助された資金、居住用の不動産購入の費用、事業承継のために受けた株式など

相続人の中に特別受益を受けている相続人(「特別受益者」といいます。)がいる場合、その相続人は「被相続人から財産(遺産)を先にもらっている」と考えます。

総合的に見て相続人同士が不公平にならないようにするために、相続のときには目の前の遺産だけでなく今までもらってきた財産(特別受益)も考慮しようという制度です。

とはいえ、特別受益者がいる場合は必ず特別受益を考慮しなければいけないというわけではなく、特別受益を受けていない相続人が「問題ない」とすれば、目の前にある遺産だけで遺産分けを行っても構いません。

特別受益の評価

特別受益は、相続開始時の価額(時価)で評価します。特別受益を受けた当時の価額ではありません。

例えば、30年前に婚姻をしたときに支度金として50万円をもらった場合、そのまま50万円で計算するのではなく、現在の貨幣価値に換算した金額で計算することになります。

過去に贈与を受けた財産の中には、相続の時に無くなっているということもあります。とくに家などは売却していることもあれば、地震などの天災で崩壊することもあるでしょう。これは無くなった原因によって次のように考えます。

  • 財産をもらった人が自分で処分(売却など)して財産が存在しない場合
    相続開始時に財産はあるものとして考えて特別受益を計算する
  • 地震などの天災が原因で財産が存在しない場合
    特別受益は無いものとして考えて計算しない(特別受益に含めない)

相続のときに各相続人の特別受益をどれだけにするのか、これは被相続人と各相続人の関係性、それぞれがもらった財産の価格などを総合的に検討して最終的に相続人同士の話し合いで決めます。

相続人同士の話し合いで折り合いがつかない場合は、家庭裁判所へ調停を申し立て、調停で話し合いを進めていきます。

実際には、具体的な金額を細かく計算することはなく、他の相続財産も含めてざっくりと決めていくことが多いようです。ただし、遺産分けでもめてしまったときには特別受益の金額をきちんと計算します。

特別受益がある場合の相続分の計算

特別受益がある場合の各相続人の法定相続分は、次のようにして計算します。

  1. 相続財産全体の価格に特別受益の評価額を加算する
    ※特別受益の金額を遺産に加算することを特別受益の持戻しといいます。
  2. 1.で出てきた金額をもとにして、各相続人の法定相続分を計算する
  3. 2.で出てきた各相続人の相続分から、それぞれの特別受益にあたる金額を差し引くと、目の前にある遺産の相続分が出てくる

言葉だけでは分かりにくいと思うので、2つほど具体例を挙げてみます。

一部の相続人に特別受益がある場合

相続人全員にそれぞれ特別受益がある場合

特別受益の持戻しの免除

相続のときに特別受益をどの程度考慮するのか、それとも特別受益のことは気にせず目の前の遺産だけを分けるようにするのか、これらの判断は基本的に相続人に委ねられます。

ところが被相続人の意志表示があれば、特別受益を遺産に含めないようにすることができます。これを『特別受益の持戻しの免除』といいます。

意思表示の方法については、遺言書だけに限らず、被相続人が生前に口頭で行ったものであっても認められます。

ただ、現実には「亡くなったお父さんから結婚資金は遺産とは別だと言っていた」と相続人が主張しても、他の相続人が認めてくれなければ争いになる可能性が高くなります。財産を遺す人は、できるだけ遺言書で意思表示をするようにしてください。


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