遺言書の種類と特徴
遺言書は、思いつくまま適当に書けばいいというものではありません。
遺言書は法律で決められた要件を満たさなければならず、その種類と特徴は以下のようになります。
方式 | 種類 | 特徴 |
普通方式 | 自筆証書遺言 | 遺言者本人だけで作成。最も簡単な遺言書。 |
公正証書遺言 | 公証役場で公正証書として作成される遺言書。作成には遺言者以外に二人以上の証人が必要。 | |
秘密証書遺言 | 遺言者本人が本文を作成し、証人二人と一緒に公証役場へ行き、遺言書の封印を行う。あまり利用されない。 | |
特別方式 | 一般危急時遺言 | 病気等で死期の迫った人が行う遺言。三人以上の証人の前で口授する。 |
難船危急時遺言 | 遭難した船舶に乗船中の人が、死期が迫ったときに行う遺言。二人以上の証人の前で口授する。 | |
一般隔絶地遺言 | 伝染病などが原因で交通手段が遮断された場所にいる人が行う遺言。警察官一人、証人一人以上の立会が必要。 | |
船舶隔絶地遺言 | 船舶中の旅客や乗務員が行う遺言。船長又は乗務員一人以上、証人二人以上が必要。 |
特別方式の遺言は、遺言者が普通方式の遺言が出来るようになってから6ヶ月生存した場合は無効となります。
この中で一般的に利用される遺言書の大部分は、普通方式の「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の二つになります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | |
作成者 | 遺言者のみ | 公証人が関与して作成 この他、二人以上の証人が必要 |
費 用 | 特になし | 公証人に対する報酬が数万円から十万円程度は必要 ※遺言内容によって変化する |
時 間 | 簡単なものであれば1時間程度 | 数週間は必要 |
必要なもの | 用紙、筆記用具、印鑑 | 戸籍、住民票、預貯金の通帳の写し、固定資産評価証明など ※遺言内容によって変化する |
メリット | ・いつでも一人で作成できる ・費用がかからない ・遺言内容が漏れない |
・字が書けない場合(手や目が不自由等)であっても作成することができる ・公証人が関与するので無効になる可能性が少ない ・原本が公証役場に保管されるので、改ざんや破棄を防げる ・相続のときに「検認」が不要 |
デメリット | ・字が書けない場合(手や目が不自由等)は作成できない ・要件に不備があると遺言書自体が無効になる ・遺言書を改ざん、破棄などされても証拠が残らない ・相続のときに「検認」が必要 |
・手間と時間がかかる ・公証人の手数料が必要 ・証人から遺言内容が漏れる可能性がある |
自筆証書遺言と公正証書遺言を比較してみると、自筆証書遺言は簡単に作成できる、費用がかからないなど「遺言者のメリットが大きい遺言書」、公正証書遺言は無効になる可能性が少ない、検認が不要等から「相続人のメリットが大きい遺言書」といえます。
また、手が不自由等で自筆することができず自筆証書遺言を作成できない人でも公正証書遺言であれば作成できるというのも大きな違いです。
自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選ぶ?
いざ遺言書を作成するとすれば、遺言者のメリットが大きい自筆証書遺言と、相続人のメリットの大きい遺言書、どちらを選べばいいと思いますか?
遺言書を作成する状況にもよりますが、当方では公正証書遺言をオススメします。
遺言書というと作成のことばかり気にしてしまいがちですが、遺言書は作成することがゴールではありません。遺言書は書いて終わりではなく、相続のときにその内容が実現されてはじめて意味があるのです。
そのことを考えれば、作成するときに費用や時間はかかりますが、相続のときに手間がかからず争いになるリスクが少ない公正証書遺言がオススメです。
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